天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
願事
「アルテミア……!?」

気付いた時、僕は倉庫街の路地裏で、倒れていた。

すぐにはっとして、胸を押さえる。

血が出ていないし…傷も癒えていた。まだあまり力が、入らない。立ち上がろうとしたが、立てなかった。

「無理をするな…魔力の動力炉である心臓を、刺されたんだ…しばらくは、まともに動けない」

ピアスから、アルテミアの声が聞こえた。

「アルテミア…」

僕は、胸に手を当てた。心臓の鼓動が、感じられた。

「アルテミアが、治してくれたの!」

「いや…」

アルテミアは、それ以上話してくれなかった。怒ったような声のトーンに、僕は、何も言えなくなった。



少し無言の間が続いた後、路地裏が少し明るくなってきた。

まだ朝日は昇らないけど、朝の倉庫街に人の気配が、感じられた。

「赤星…あの島まで、飛べるか?」

「う、うん…」

腕や足の力は、入らないが…思念などの超能力は、使えそうだ。

ただし、一回で今ある魔力を消費しそうだ。

「やってみる」

僕は、目を閉じた。





「さ、寒っ!」

身を縮ませながら、作業服を着た男が、走っていた。

「どこいくんだ?」

同僚の声に、走りながら男は、答えた。

「おしっこ!」

海岸に並ぶ倉庫の間を、男は曲がり、

「朝は冷えるから…近くなる」

男がおしっこをしたところは、ちょうど赤星が倒れていた場所だった。

地面についた血も…まだ朝日が昇る前だから、

男は、そのことに気付かなかった。




< 934 / 1,566 >

この作品をシェア

pagetop