天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
「余計なことは、するなよ!」

綾子はもう一度、マスターに言い放つと、

カウンターから離れた。

そして、背を向けて…扉へと歩いていく。


「女神。どこへ…」

マスターは顔を上げると、綾子の背中に声をかけた。

綾子は、振り返ることなく、

「行くぞ…あたしは」

綾子は、扉に手の平をつけ、

「すべてを終わらせる為に」

綾子は、手の平からの気を放つと、吹き飛ばされたかのように、勢い良く扉が開いた。

外の世界を軽く睨んでから、綾子は店から出た。



すると、1人のお客が席を立った。

出ていこうとする男の客に、マスターの鋭い声が飛んだ。

「殺すな!女神の命だ。いずれ…近々…皆、処分される。それにだ…」

マスターは、拳の形でへこんだカウンターを見つめながら、

「戦いが始まる。戦える者は、すべて…女神に後に続け」

マスターはゆっくりと顔を上げると、端から端…店内にいるお客の顔を1人1人確認し、

「我らの世界にする為の…第一歩!誰にも、邪魔はさせるな!」

マスターの激に、店内にいたお客の雰囲気が変わる。

人とは違う…匂い。

「は!」

一斉に、声を上げ、全員が立ち上がった。

マスターは頷くと、

「行け」

と、いつもより、低い声で命じた。





次々に、店内から飛び出していくお客を見送りながら、

マスターはカウンターから出た。


そして、扉を開き…店を出ると、

扉の真ん中にかけてあったプレートを……クローズに変えた。


その文字を見て、フッと笑い…目をつぶりながら、歩きだそうとしたマスターに…

誰かが声をかけてきた。


「今日は、終わりなんですか?」

その声にはっとして、マスターは目を開いた。


そこにいた者は…。


「女神…」

思わず呟いたマスターの前に、美奈子が立っていた。






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