天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
男は、結界を張っている右手を下ろした。

「後は、君の問題だ!」

そして、左手を真横に突き出す。

薬指に輝く指輪。


「そ、それは!」

僕の驚きの声をかき消すように、男が叫ぶ。

「モード・チェンジ!」

結界が消えた瞬間。

眩いエメラルドグリーンの光が、辺りを照らし、

男が着けていたアーマーが、弾き飛ばされた。

魔物達は眩しさに、目を細めながらも、飛んできたアーマーを避ける。

「何だ!?」

エメラルドグリーンの光は…

やがて形を持ち、髪の毛へと変わっていく。

光が止んだ時、

僕の前に立っていたのは、

1人の少女。

綺麗なエメラルドグリーンの髪に、エメラルドグリーンの瞳。

黒い鎧…その肩当てに、

黙の一文字。


それは、1ヶ月前…天空の騎士団と戦い、

命を散らしたはずの…ブラックサイエンス隊のサーシャ……

その人だった。

「女あ?」

奈津子を殺した魔物が、いきなり現れたサーシャに、首を捻りながら、無防備に近づく。

サーシャは、魔物に一瞬だけ微笑むと、右手を額に当て、左手を突き出す。

「サイエントボム」

「はあ?」

魔物が、サーシャに近づいた瞬間、

魔物の全身が、雑巾を捻るように歪む。

「クラッシュ」

サーシャは呟いた。

「貴様!」

魔物が千切れると同時に、もう一匹が空中から、サーシャに突っ込んできた。
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