天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}
11時39分。


破裂した腕の痛みに、悶え苦しむ実行部隊の様子に、

一瞬だけ唖然としてしまった明菜は、急いで神野のもとに、駆け寄った。


「神野さん!」

悶え苦しむ実行部隊の間を抜け、神野を抱き上げたが…もう神野は、虫の息だった。

「しっかりして!神野さん!」

明菜の言葉に、力なく笑いかけると、

神野は、何とか口を動かし…最後の言葉を発した。

「あ、ありがとう……」

神野はとっくに、死ぬ覚悟があった。だからこそ、神野は右手を上げ…次元刀を明菜に示した。

「生きろ…」

神野の体にもう…腕を動かす力はなかったはずだ。

しかし、沙知絵の腕は上がった。

「神野さん…」

次元刀を明菜に、差し出した形のまま…神野は息絶えた。

生きろ。


最後の言葉を残して。 


明菜は、神野を抱き上げながら、号泣した。

だけど、そんな余裕はなかった。

片腕を失った実行部隊は、さすがに…暗殺部隊だった。

彼らは、傷の深さと武器を失ったと知ると…その身を変化させた。

数十人の人の姿をしていた者は、各々の異形の姿に変わる。

蛇を思わす者…蜂を連想させる者。

彼らは、明菜に向かってくる。


「神野さん……」

神野の顔に、涙が落ちた。

「あたしは……」

もう泣いては、いけなかった。

明菜は神野の手から、次元刀を受け取ると、

神野を地面に横たえ、ゆっくりと立ち上がった。

「生きます!」

不慣れながらも、明菜は次元刀を握りしめ、構えた。

「絶対に、生きます!」


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