「部活~ウチらバスケ部~番外編」 佐紀、二十歳
佐紀は、静かに聞いていたが、
まだ経験も浅く、
お婆さんの言っている事は
漠然としか、わからなかった。
ただ、“痛み”の部分だけは、
よくわかった。
佐紀は、
自分がケガをした時の事を思い出し
“確かにそうだな”と、納得していた。
お婆さんの独り言は、まだ続いていた。
「なんか、辛い事があったかも知らんが
悲しさを知らん人間には、
幸せも、わからん。
そのうち、いい事もあるじゃろう。
それを見てみたいとは、思わんかね」
しかし、今の佐紀には、楽しい事など、
全く、想像する事が出来なかった。
佐紀の気持ちは、
暗く沈んでいるがために、
お婆さんの言葉は、佐紀の上を、
滑って行くだけだった。
すると、前のベッドからも、声がした。
「人生、山あり谷ありやからなぁ」
佐紀が目を上げると、
前のベッドのお婆さんが、こちらを見ていた
すると隣のお婆さんが、
「そうじゃ、じゃから人生は、
面白いんじゃがのぅ」
「せやなあ。
長いコト生きとうと、
いろいろあるわなあ」