「部活~ウチらバスケ部~番外編」    佐紀、二十歳

  「息子は、
   医者をやってたんじゃがのう」


  「そら、ええやんか」


  「そうでもないんじゃが」


  「どないしてん」


  「定年の後、
   “国境なきなんちゃら”で、
   アフリカに行ってしもたんじゃ。

   さあもう、私が生きてるうちに、
   会えるかどうか。

   こんな事なら、医者になんか
   せなんだらと、思ってのう」


  「せやけど、会おう思たら、
   会えるやんか」


  「なんの。

   アフリカの山奥じゃが。

   行き着くまでに、
   こっちが死んでしまうぞな。

   じゃから、もう息子は、
   死んでしもたモンとして
   諦めとんじゃ」


  「せやなあ。

   アフリカは、遠いわなあ。

   元気、しとんのかいな」


  「さあのう。

   何の連絡も無いんじゃから
   生きとんじゃなかろかのう」


  「何やそれ。

   息子やないか。

   無責任やなあ」


  「まあ、私にとっちゃ、
   アフリカもあの世も、
   そう変わらんトコじゃなかろかのう」


  「ハハハ、せやなあ。

   そうかもしれんわ。

   ほな爺さんも、そこにおるんかいな」


  「そうかもな。

   何の連絡も無いんじゃから、
   そこで元気にしとるんかもしれんわ」


  「ハハハ、連絡があったら、
   オカシイやろ」


  「ハハハ、ホンマじゃ」

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