「部活~ウチらバスケ部~番外編」 佐紀、二十歳
佐紀が目を開けると、天井が映った。
病室の天井だった。
“やっぱり、夢かぁ”
佐紀は、夢で見たことを、おぼろげながら、覚えていた
夢を思い出そうとした時、パッと、
祐太の笑顔が現れた。
しかし、以前のような、喪失感や空しさは、
それ程感じられなかった。
心の疼きは残っているものの、
何か、懐かしさにも似た感情が、
漂っていた。
“やっぱ、祐太の笑顔は,
癒されるなあ”
佐紀は、祐太の笑顔が、大好きだった。
普段は仏頂面をしているけれど、
祐太が笑顔になると、それだけで、
佐紀も幸せな気分になったのだった。
「あら、起きたのね」
佐紀のお母さんが声をかけ、覗き込んだ。
「どうしたの?
なんか、ニコニコして。
もう大丈夫みたいね」
どうやら佐紀は、祐太の笑顔を思い出し、
佐紀も、笑顔になっていたようだった。
伯母さんが、
「前のお婆さん、亡くなったみたいよ」
そう言うと、佐紀は、
“うん、知ってるよ”と思ったが、
「そう」
とだけ、言った。