「部活~ウチらバスケ部~番外編」    佐紀、二十歳

次の日、大学へ行くと、
ナッキーが飛んできた。


  「サキ、倒れたんだって?」


ナッキーの地獄耳は、相変わらずである。


  「うん、もう、大丈夫」


  「そう、よかったぁ~

   サキ、最近ちょっとおかしかったから
   心配したよ」


  「おかしかった?」


  「うん、時々、心が、
   どっか遠くに行っちゃった感じで、
   どうしたのかなって思ってたんだ」


  「ごめん。もう大丈夫だから」


  「やっぱ、フラれたことが原因?」


  「いや、そういう訳じゃないけど……」


  「ん~、もう歯切れ、悪いなあ。

   じゃあ、何なの。
   はっきり、訳、聞かせてよ」


ナッキーは、心から心配していた。

佐紀も、それがわかるから、仕方なく
今までの事を、ナッキーに話した。


  「そうなんだ。
   ゴメンね、知らなくて」


ナッキーの目には、涙がにじんでいた。


  「ううん、大丈夫。

   かなり、気持ちの整理も
   ついてきたから」


ナッキーは、両手で佐紀の肩を掴み、
揺すった。


  「サキ、何でも言ってよ。

   私に出来る事なら、
   何でもするから」


佐紀も、つられて涙目になりながら、


  「ありがとう。でも、大丈夫。

   そう言ってくれるだけで嬉しいから」


ナッキーは、笑顔に戻って、


  「でも、出来ない事は、
   “出来ない”って、言うから」


  「うん、わかってる」


  「このぉ~」


ナッキーは、佐紀を肘で小突いて、笑った。

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