「部活~ウチらバスケ部~番外編」 佐紀、二十歳
佐紀は、その日の事を思い出しながら、
左手でペンダントを握りしめ、
唇を、右手の中指で、そっと沿わせてみた。
懐かしい想いが蘇る。
それは、透明の、
クリスタルの結晶の中に封じ込められた、
大切な想い出だった。
佐紀の口元に、笑みが浮かんだ。
佐紀は、目を瞑った。
広がる草原の中に、笑顔の祐太が立っている
佐紀は、祐太に話しかけた。
「祐太、私、次へ行くね。
祐太を失った事は辛いけど、
ここに留まってるわけには、
いかない気がしてるんだ。
この穴は、簡単には
埋められないかもしれないけど、
少しずつ進んで行こうと思う。
あなたの事は、忘れないよ。
あなたがいたから、
今の私が、あるのだから」
笑顔の祐太が、答える。
「おっ、頑張れよっ」
佐紀は、そう言われた気がした。
「うん」
佐紀は、大きく息をすると、
そのまま、眠りに落ちて行った。
その寝顔は、安らかな表情をしていた。