「部活~ウチらバスケ部~番外編」    佐紀、二十歳
(2)下宿

(2)下宿

佐紀は、電車を降りると、下宿に向かった。


佐紀は、料理が苦手である。

大学生になると、毎日、
自分で作らないといけないのかと思うと、
気が重かった。

しかし、幸いな事に、
大学からは少し離れてはいるが、
母親の姉になる伯母さんが、住んでいた。

そこで佐紀は、伯母さんの家に、
下宿することになった。

伯母さんには、二人の男の子がいたが、
今は就職していて、家を出ていた。

だから、部屋も空いていて、
喜んで佐紀を、受け入れてくれた。

伯母さんも、佐紀が来て、嬉しそうだった。

以前、


  「私の所、男ばかりだったでしょ?

   だから、女の子が来てくれて、
   嬉しいわぁ」


そう言われた事があった。

そして伯母さんは、なにくれとなく、
佐紀の面倒を見てくれた。


門限があるとか、多少の不便さはあるが、
佐紀は、それ程、苦にはならなかった。

まあ、門限と言っても、
決まった時間があるわけではないけれど、
遅くなった時の伯母さんの心配は、
尋常ではなかった。

佐紀は、叔母さんに心配をかけまいと、
部活が終われば、
すぐに帰る事にしていた。

それより、食事を作らなくてもいい事の方が
不便を上回っていた。

疲れて帰って来た体で
食事を作るというのは、
どうしても、億劫になる。

かといって、外食にすると、
好きなものばかり食べてしまって、
栄養面で、不安が残る。

部活する者にとって、下宿生は、
とかく負担が大きかった。


家に帰れば、当たり前のように、
食事の支度が出来ている。

佐紀は、外に出てみて、
初めて、そのことがわかり、
母に感謝せずにはいられなかった。

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