「部活~ウチらバスケ部~番外編」    佐紀、二十歳

ナッキーは、突然思い出したように、


  「そうだ、土曜日の練習、
   いつ?」


  「明日は午前だけど、何?」


  「美味しいパスタの店、
   見つけたんだ。

   昼から、行かない?」


さすがにナッキーは、この手の情報には
そつがない。

しかし、困った事に、
その日は、都合が悪かった。

断ると、きっと、
事情を詮索されるだろうと思いながらも
佐紀は、断るしかなかった。


  「その日は、ちょっと」


  「そっかぁ、残念」


ナッキーは、ちょっと考えてから、


  「もしかして、デート?」


  「えっ、あっ、いや、うん」


佐紀は、恥ずかしそうに言った。


佐紀は、嘘は言わなかった。

自分からは言わないけど、
訊かれた事には、正直に答えた。

もし言いたくなければ、「言いたくない」と
正直に言った。

だからナッキーも、佐紀を信頼していた。

それが、佐紀との友達関係が、
長く続いている理由かも知れなかった。


  「じゃあ、仕方ないね」


  「ゴメン」


  「邪魔しちゃ、悪いもん」


  「リーグ戦で、
   ずっと会えなかったから」


  「じゃあ、久しぶりなんだ」


  「うん」


ナッキーは、悪戯っぽい笑顔をして、


  「そりゃあ、燃えるよね」


  「違うよ。

   そんなんじゃないってば」


佐紀は、耳まで真っ赤になって、否定した。

ナッキーは、その、佐紀の素直な反応が、
面白くて、仕方がなかった。


  「へへっ、まあ、いいや。

   じゃあまた、
   時間のある時に、行こうね」


  「うん」

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