「部活~ウチらバスケ部~番外編」 佐紀、二十歳
佐紀は、待ち合わせ場所に、30分も早く
着いてしまった。
“ちょっと、早すぎたかな”
しかし祐太は、
約束の時間になっても、現れなかった。
佐紀は、
“絶対、寝坊してるな”
と思ったが、辛抱強く待った。
約束の時間から30分以上経ったろうか、
ようやく、祐太がやって来た。
「ゴメン、寝過ごした」
「もぅ~、あれほど言ったのにぃ」
「ゴメン、ゴメン、
昼メシ、奢るから」
「う~ん、じゃあ、許してあげる」
佐紀は、楽しそうな声になって、
「お昼ごはん、何にしようかなっと」
「おいおい、
あんまり高いのは、勘弁してくれよ」
「わかってるって、お互い、
下宿生だもんね」
二人は、そこからバスに乗って、
湖畔の公園に向かった。
そのバスの中から、佐紀はよくしゃべった。
大学や部活の事、下宿の伯母さんの事、
とにかく、よくしゃべった。
公園に着いてからも、佐紀の話は、
とどまる事を知らなかった。
二人、肩を並べて歩きながら、
別々の大学へ行ってからの時間を
埋めるかのように、よくしゃべった。
佐紀は、話すことが楽しかったし、
祐太に話を聞いてもらえる事が
嬉しかった。
祐太も、そんな嬉しそうな佐紀を、
見ているのが楽しかった。
今思い出しても佐紀は、
どこをどう歩いたか、覚えていない。
覚えているのは、祐太が笑顔で、
ウンウンと、うなずいている姿だけだった。
気がつけば、もう夕方になっていた。
佐紀が、どれだけ歩いたかを知ったのは、
帰ってからの、
足のだるさと筋肉の張りからだった。