「部活~ウチらバスケ部~番外編」    佐紀、二十歳

翌日、
佐紀がルンルン気分で教室に入ると、
やって来たナッキーが、
それを見逃すはずは無かった。


  「おっはよぉ~
   おっ、どうしたぁ。

   ルンルンじゃね。

   なんか、いい事、あった?」


  「えっ、いや、別に……」


  「さては、デートかぁ」


  「あっ、いや、その……」


佐紀の顔は、正直だった。

ナッキーといると、何も隠し事は出来ないと
思ってしまうのだった。

するとナッキーは、
驚くほど喰いついて来た。

ナッキーは開口一番、


  「ねっ、キスしたの?」


  「まだだよ。
   まだ始まったばっかなんだもん」


その質問に佐紀は、
真っ赤になりながら、答えた。

ナッキーの関心は、唯一そこだった。

どこへ行ったとか、何を話したとかは
全く、訊こうともしなかった。


  「ホントにぃ?」


ナッキーは、意地悪っぽい笑顔で、
下を向いた佐紀の顔を覗き込んだ。


  「ホントだよ。
   もう、変な事、訊かないで」


  「だって、付き合ってるんでしょ?

   もういい歳じゃん。

   今ドキ女子で、キスしたことない子
   いないよ」


佐紀は、
もし紙を近づければ燃えてしまいそうに、
真っ赤な顔をして、消え入りそうな声で、


  「だってぇ」


ナッキーも、
これ以上訊くのは可哀そうと思ったのか、


  「わかった、わかった、
   それは、信じよう。

   で、手くらいは繋いだんだよね」

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