「部活~ウチらバスケ部~番外編」    佐紀、二十歳

そして、
その時も同じ言葉をかけられたなと思い、
トボけてみることにした。


  「そうなんですか。

   私、はっきり覚えてないんですが、
   何処だったですか?」


  「えっとぉ、あの、俺も、
   はっきり覚えてないんだけど、
   確か、あった事あると思うよ」


佐紀は、男子の狼狽ぶりを見て、
ちょっと、意地悪な気持ちが芽生えた。


  「いつ頃ですか?」


  「えっ、あの、その、
   2年前くらいだったと思うよ」


  「2年前と言えば、私、
   高校生だったんですが、
   その時………?」


  「あっ、いや、
   そんな前じゃなかったかな」


  「じゃあ、いつ?」


  「えっとぉ、それは……」


佐紀は、


  “この辺で、そろそろ、
   勘弁してやるか”


と、思い、


  「私、覚えていますよ」


  「えっ、何を?」


  「あなたと、会った時のこと」


  「えっ、会ってんの?」


  「ええ」


  「何だ、会ってんじゃん」


この男、会っていたとわかると、
急に、なれなれしくなってきた。

いつもの常套句を言ったら、
たまたま、当っていただけなのだが。

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