「部活~ウチらバスケ部~番外編」 佐紀、二十歳
電話の声のトーンが、落ちた。
「平岡様は、こちらに着いた時にはもう
残念ながら、お亡く……」
佐紀は、病院の言葉を、
最後まで聞くことが出来なかった。
腕の力が抜け、
携帯の重さに耐えられなくなった。
腕が、ダランと、垂れ下がる。
携帯が、床に落ちた。
そして、佐紀は、全身の力が抜け、
折りたたむように、床に崩れ落ちた。
しかし佐紀は、悲しさを感じなかった。
というより、佐紀の意識は、
活動を止めたのだった。
佐紀の周りから、色が消えた。
心に、何の感情も、湧き上がって来ない。
思考も感情も、活動を停止し、
ただ、与えられた事に、
反応するだけになっていた。
後で知ったのだが、
梨沙や友理達が、電話をくれて、
それに対して、
受け答えをしていたらしいのだけど、
佐紀は、全然、覚えていなかった。