「部活~ウチらバスケ部~番外編」 佐紀、二十歳
達矢は、ボソッと言った。
「人って、あっけないもんだな」
それから達也は、下を向いて、
ポツリポツリ、話し始めた。
「あの時、祐太は、俺と一緒にいたんだ
……… 新しいバッシュを………
買いに行くんで………
………祐太が、付き合ってくれて」
「………」
「信号待ち、してると、………
………車が突っ込んで来て………
そしたら、………
祐太が、俺を突き飛ばして………
………そのせいで、逃げ遅れて」
静かに聞いていた佐紀の頬を、
涙が一筋、流れた。
「サキっ、ゴメン。
俺が祐太を突き飛ばして、
撥ねられりゃ、よかったんだ」
それを聞いた佐紀は、達也の所へ行き、
ギュッと腕をつかむと、
「そんなことない。
そんなことないよ。
そんな風に思っちゃ、ダメだよ」
佐紀は、涙を拭うと、微笑んで、
「祐太らしいや。
いつも、相手の事を考えていて…。
もっと、自分を出せっちゅうの」
そう言う佐紀の声は、震えていて、
笑っているのか、泣いているのか、
わからなかった。
「俺、頑張るよ。
アイツの夢だった、1部昇格を、
絶対、やって見せる。
アイツに、笑顔を贈るんだ」
佐紀は、うなずいて、
「うん、頑張ってね」
「ああ、じゃあな」
達也は背を向け、足を引きずりながら、
帰って行った。
佐紀は、その後ろから、声をかけた。
「達也、ファイティン」
佐紀は達也に、重荷を背負わさない様に、
努めて明るく振舞ったが、
去って行く達也の背中は、寂しそうだった。