「部活~ウチらバスケ部~番外編」 佐紀、二十歳
通夜、葬式が終わって、みんなそれぞれ、
自分の生活に、戻って行った。
佐紀も、
伯母さんのいる下宿に帰って来た。
皆がいる時は、
いらぬ気遣いをさせない様、
明るく振舞っていたが、一人になると、
次第に寂しさが、募って来た。
フラれたのだから、単なる友達に戻って、
関係ないと言えば、関係ないのだが、
納得の行かない別れ方だったから、
気持ちの整理が、つけられないでいた。
佐紀は“時間は十分にある”と思って、
何もしなかった自分を、責めていた。
そしてそれが、佐紀の悲しみに、
拍車をかけていた。
“なぜあの時、
もっと強く出なかったのだろう。
そうすれば、
違う今になっていたかも知れない”
その考えが、頭を離れなかった。
傍から見ると、
ごく普通に生活しているようだが
佐紀の中では、非現実感が漂っていた。
日常が、夢の中のようであり、
それを横から見ているような感覚に、
囚われていた。
葬式によって、祐太の死は、わかった。
しかし、それを受け入れたくない、
もう一人の佐紀がいて、その佐紀が、
傍から見ているのかもしれなかった。