ノラ猫
 
「すご……」


だいぶ奥へ進んだところだった。


そこには、ひときわ大きな桜の木。

他の桜よりもずっと存在感があり、花びらの色も他の桜と比べて少しだけ濃いピンク色だった。


桜の花の匂いが辺りを充満していて
花びらの絨毯が出来ている。

それでもなお、木には満開の桜の花。


「……」


再び足を進め、その大きな桜の花の下まで行った。


幻想的で……
怖くなるほど綺麗な桜。

ゆっくりと体を降ろして、木を背もたれにするように座った。



ああ、なんだか……
ひどく疲れた。



見上げると、下から見ても迫力のある桜。

桜には、あたしの心を読まれている気分だ。




「………会いたい…よ…」




今だけは、素直になっていいと、許されているような気がして
桜にすがるように、本音をつぶやいた。
 
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