ノラ猫
智紀を苦しめたくないから突き放したのに
逢いたくてどうしようもないほど苦しくなる。
逢いたい……。
逢いたいよ。
チリン……
その時、腕の鈴が鳴った。
(これをつけてれば、凛がどこにいるか分かると思って)
そう言って、つけてくれた鈴。
智紀。
あたしはここにいるよ。
早く見つけて。
……だけど見つけないで。
逢いたいけど見つかってはいけない。
あたしの存在が、智紀を巻き込んでしまうから……。
だけど今だけは、この鈴の音を……。
チリン…リン……。
小さく奏でる鈴の音が
あたしの心を癒すようになり続けた。