ノラ猫
 
それからいい方向に向かっていると思った。


だんだんと凛の表情が柔らかくなって
まだなかなか笑ってはくれないけど、嬉しそうにしているときは分かる。

照れている顔も
寂しそうな顔も
不機嫌な顔も……

まったく変化のなかった表情が、様々な感情を持ち始めた。



どうしてこんな年の離れた彼女に
バカみたいに必死になっているのか……。


そんなこと、もうとっくに気づいていた。



あの公園で
光のない瞳をした彼女を見た瞬間
俺の心はひどく揺れ動かされていて……


名前をつけられない感情が押し寄せてきたんだ。


少しずつ変化を持つ彼女に
どんどんと引き寄せられる俺の心。



初めて知った。

コントロールできなくなりそうなほどの感情と
泣きたくなるほどの愛しさ。



これが誰かを好きになることなのか……。



28歳にして
俺は18歳の少女に恋をしていた。
 
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