ノラ猫
「ただい………凛?」
鍵をまわして、ドアを開けて違和感。
いつもなら明るいはずの部屋は、暗いままで……
「凛?寝てんの?」
不安を抱きながら、足早になってリビングの扉を開けた。
だけどそこには誰の気配も感じられないほど静かで……。
慌てて寝室へと向かった。
「凛!」
寝室の扉を開けて、ベッドへと視線を向ける。
そこも朝、凛が畳んだまま、綺麗に布団が折りたたまれた状態。
「どこ行ったんだよ……」
突然いなくなった凛に、ただ茫然としてしまった。
まさか出て行った?
こんないきなり何も言わないで……?
最近の俺たちは、自惚れじゃなければ結構うまくいってると思ってた。
凛も少しずつ心を開き始めてくれていて、そのうち笑ってくれるんじゃないかって……。
一緒にご飯を食べる時間も
朝「おはよう」と交わす挨拶も……
凛にとっても大事な時間になってるって……そう思ってた。
だからいきなり姿を消すなんて思ってもなくて……
「まさかっ……」
一人の人物が頭をよぎって、血の気がいっきに引いた。