ノラ猫
一週間前、突然現れた凛の義兄。
今まで見たことのないほど凛が怯え、必死にこの子を守ってあげねぇとって思った。
感情を捨てたはずの凛が
再び怯えを感じるようになったのは、間違いなく俺のせい。
嬉しいことや楽しいことを共有したくて
捨てた感情を一つずつ拾い上げてしまったから……。
だから当然、怖いと思うことも寂しいと思うこともあって
過去のトラウマを与えた義兄にたいして、止まらない震えを抱えるほど感情を露わにしていた。
小さな体に植えつけられた
過去の出来事は壮絶すぎて……。
凛の過去を聞いた瞬間、その義兄に対して殺意すら覚えた。
許せねぇ。
だけど今は、そいつに復讐とか考えるよりも
目の前の小さく震える凛を守ることのほうが大事だったから……。
これ以上この子に痛みを与えないよう
壊れ物を扱うように大事にしていた。
凛自身、義兄との再会をしてから、家を出ることすら怖がるようになっていた。
無理やり外に出させるつもりもなかったし
代わりに週末は俺が外に連れて行ってやろうって……。
それなのに……
「凛っ……」
姿を消した凛。
そこに、義兄が何かしら関わっていると予感した。