ノラ猫
 
すぐに外に出て、凛の行方を捜した。


家の周辺も
駅付近も
凛と出逢った公園も……


だけど凛の姿はどこにもなかった。


くそっ……
どこ行ったんだよっ……。


凛の行方の手がかりなんてまるでない。
ましてやあの義兄が連れ去っているんだとしたら、それこそ見当もつかない。


もともとの凛の家も知らない。
どこに向かってもいいか分からない。


ただがむしゃらに探して
電車の時間なんてとっくに終わっていて……。


気づけば真っ暗だった夜は
朝日が差し込んできて……。


もしかしたら、凛も戻ってきているかもしれない。
そんな淡い期待をして、一度家に戻ろうとした。


だけどマンションの前に、一つの車が停まっていることに気づいた。


こんな朝早くから、見慣れない黒塗りの車。

少し警戒しながら、その車に近づくと、



「やあ」



俺を待っていたかのように、一人の男が微笑んで声をかけてきた。
 
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