ノラ猫
智紀はゆっくりとあたしに近づいて、目の前に立ち尽くした。
見上げた先の智紀は、あたしを見て悲しんだ顔をしている。
お願い。
何も構わないで。
このままあたしを見捨てて……。
だってあたしは
また汚れてしまった。
幾度となく、男たちに抱かれてしまった。
これ以上近寄られたら、智紀に幻滅されてしまう。
「凛、帰ろう」
しゃがみこんで、優しく微笑んでくる智紀。
帰る?
どこに?
「あたしに家なんて必要ない」
汚れたあたしが、居座っていい場所なんてどこにもない。
居座ってしまったら、きっとそこが汚れてしまう。
「凛の家は俺の家だろ」
「やめて」
そんな生ぬるい言葉、かけないで。