ノラ猫
 
「あたし、汚いの。
 またいっぱい汚れちゃったの」


ゆっくりと持ち上げた腕。
めくって見せた、無数の痣。


「っ……」


二の腕には青痣。
手首には縛られた痕。


全て、にいさんたちに汚された証。


「智紀に触る資格なんかないほど、今は汚れて……」


言葉は最後まで言い切れない。

あたしの体は、智紀の体に包み込まれていた。


「ごめんっ……凛、ごめんっ……」


耳元で聞こえる、謝罪の声。


どうして智紀が謝るの?
智紀が悪いことなんて何もない。


「大丈夫。
 こんなの……慣れてるから」


そう。
あたしはいつだって、にいさんの玩具だった。

家を出る前だって、ずっとそうだった。
ちょっと休憩をはさんだから、体が悲鳴を上げてただけ。


こんなの、慣れっこ。


「凛……」


あたしの返事に、智紀は悲しい声を漏らした。
 
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