ノラ猫
「分かってる?
俺にとっても、凛は人生を変えた人物だってこと」
「え……?」
「初めて、誰かを大事だって思えた」
初めて聞く、智紀の感情。
最初から、この人はあたしに優しくて、これが彼の性格なんだと思ってた。
だから今までも、様々な人を大事にしているかと思ってた。
「凛に出逢う前まで、結構俺、最低な人間なんだって知ってた?
女の扱いなんてヒドイもんだったよ」
そう言って、智紀はくすくすと笑っていた。
想像もつかないその姿に、ただ目をぱちくりさせる。
「だから凛がいなくなったとき、すげぇ絶望感に溢れた。
自分の一部を失ったみたいで、早く見つけ出さないとって……」
智紀が、こんな自分を探してくれていたことは分かってた。
だけどそんなふうに思われていたなんて知らなかった。
「もう俺の人生は、凛なしじゃ考えらんねぇんだよ」
「っ……」
心が……
満たされていく……。
消えていた光が、再び宿っていく。