ノラ猫
ふわりと浮いた体。
気づけばあたしは、智紀に抱きかかえられいる。
「じゃあ、帰るぞ」
当然のように、言ってのける言葉。
帰る……。
それはもう一つの家しかない。
「幸せの意味、知りたいんだろ?」
にやりと笑って、あたしの返事を促す。
幸せの意味なんて、本当はもう分かってるかもしれない。
こうやって、智紀の腕の中にいるだけで、心が温かくなって満たされていくから……。
だけどもう少しだけ
この腕に甘えたいと思うから……。
「うん……。
一緒に帰る」
抱きかかえられたその首に
ぎゅっと抱き着いた。
「凛を導いてくれて、ありがとな」
途中、智紀はあたしの腕の鈴に口づけた。
智紀があたしを見つける手がかりになった鈴の音。
これがあたしたちを繋げてくれた。
ノラ猫も
幸せな道を歩いてもいいですか。