ノラ猫
11章 迫りくる危機
「……」
心地いい温もり。
ふと瞼を開けると、目の前には綺麗な寝顔。
ああ、そっか……。
昨日は智紀と一緒に寝たんだ……。
もう一度帰ってこれたこの部屋。
二度と会うつもりのなかった人。
だけど今あたしは、その人の腕の中で眠っていて……。
「………起きた?」
「あ……」
じっと見上げていると、その瞼が開かれた。
「起きてたの?」
「ああ。凛の寝顔見てた」
「……」
そんな言葉すら、くすぐったい。
好きだと自覚したから、余計に恥ずかしい。
「よく寝れた?」
「うん……。久々に」
「ならよかった」
本当に、こんなにぐっすり眠れたのは、何日ぶりだろう。
あの家に連れ戻されてから、あたしは安眠というものが出来なくなっていた。
だけど智紀の傍というだけで
こんなにも安心して眠れる。