ノラ猫
 




智紀が仕事に行って、だいぶ経った。

冷蔵庫には食料品もたくさん入ってて、生活に困らないようになってる。


苦痛ではないけど
さすがに退屈。

だけど外に出るほど、バカではない。



今日は何時に帰ってくるのかな……。

ソファーに腰掛けながら、面白くもないテレビに目を通していると、



ピンポーン……

ふいにインターフォンが鳴った。


ビクッと体が震えて、おそるおそるインターフォンのモニターを覗いてみる。
カメラ付きのインターフォンでよかったと、心から思った。


出ることはなく、映ったモニター画面には……


「ぁ……」


そこには、黒いスーツを着た男。


おじさんの……付き人の一人だった。


もうここまで嗅ぎつけてきたんだ……。
あたしがここにいるのを気づいてる?
それともただ、確かめに来ただけ?


心臓がドクドクと波打って、じんわりと汗をかいていく。

モニターはパッと消えて、黒くなり、インターフォンが再び鳴ることはなかった。
 
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