ノラ猫
「なあ、前から思ってたんだけど……
凛の家って、何かすげぇとこなの?」
抱きしめたまま、抱えていた疑問を聞かれた。
すごいとこ……。
そう…。
世間一般的に考えると、あの家は普通じゃない。
「神楽坂インターナショナル。
それがおじさんの会社」
「な……マジ、かよ……」
あたしから出た会社の名前に、智紀もさすがに驚きを隠せないでいた。
神楽坂インターナショナル。
多分、国内で知らない人はいないと思う。それどころか、海外ですら通用する名前だ。
だからあたしが養子として……
いや、にいさんの玩具として引き取られたのは、本当に金持ちの娯楽に過ぎなかった。
そしてゆくゆく、あの会社はにいさんが継ぐのだろう……。
「驚いた、よね……。
ごめん。だから本当に、これ以上あたしがここにいたら智紀に……」
「何言うつもり?」
迷惑をかける。
そう続けようとしたけど、それは智紀に遮られた。
そっと体を離して、じっとあたしを見据えてくる。
力のあるその瞳に、何も言えず黙って見返していると、
「逆に好都合だ。それだけ有名なら」
智紀は面白そうに微笑んだ。