ノラ猫
「凛はどうした?」
先に聞かれた、凛の所在。
何をのうのうと聞いてきやがる……。
「どうだっていいんじゃないですか?
あなたにとって、凛は娘ともなんとも思っていない存在でしょう」
自分で言ってて、胸の痛くなる話だ。
養子として引き取ったくせに、この男は一切凛には愛情を注いでこなかったと凛から聞いた。
だから凛がいなくなったところで、この男には関係ないはず。
「まあな。娘と思ったことなんて一度もない。
ただし、息子の大事な玩具だ」
「っ……」
あの息子にして、この親。
間違いなく、最低な親子。
人を玩具と称するなんて、腐っている。
「最低だな」
思わず漏れた一言に、神楽坂は口角を釣り上げて微笑むばかりだった。
「君も似たようなものじゃないか。
所在知らずの女の子を拾って、自分好みにでも育てているんだろ?」
「はあ?ふざけんな!
俺は凛にそんなものを押し付けてんじゃねぇ」
「あの子は悟が育て上げた、最高の女だろ」
「て、めぇっ……」
ギリッと拳を握りしめ、爪が手のひらに食い込んだ。
今すぐ殴り殺したい。
この男も……凛を傷つけた悟という男も……。