ノラ猫
 
「これ以上お前らに話してても意味がねぇ。
 こっからは俺の言い分を話させてもらう」


これ以上この男といると、我を見失ってしまいそうだった。

だけど危機一髪のところで思いとどまり、本来の目的へと移す。



「これから金輪際、凛に関わるな」



これが俺の、最大の目的。


「それは私が決めることではない。
 悟が決めることだ」

「アンタに拒否権はない」

「なんだと?」


ようやく、会話の主導権を握ることができ、鞄から一枚の紙切れを出した。
テーブルの上に置いて、神楽坂に見えるようにする。


「凛は、あなたの息子……悟さんにされてきたことを世間に公表すると言っていました。
 それともう一つ。
 最近の悟さんの行動も追いかけさせてもらってます」


そこには、雄介に書いてもらった凛との記事。

聞いていて、胸が痛くなるほどの過去を、凛は戦うためにさらけ出してくれた。
俺が追いかけたのは、義兄の悟の行動。

あんな男だから、何かしら爆弾を抱えていると読み、それを追いかけたら予想通り。
合法ドラッグを密売している店に、何度も出入りしているようだった。

店に出入りしているところの写真しかおさめていないが、もっと深く突っ込めば、自分自身が密売しているところも掴めるだろう。
 
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