ノラ猫
 





「ただいま」


家に帰って、リビングの扉を開けると、
クッションを抱きしめながらソファーに座る凛がいた。

俺の姿を見つけるなり、すぐに立ち上がって駆け寄ってくる。


「あのっ……」


結果がどうなったのか、柄にもなくそわそわしている凛が、可愛いなんて思ってしまった。


「凛」


俺は、そんな目の前の女の子を、力いっぱい抱きしめた。


「智紀……?」
「大丈夫。終わったよ」
「おわ、ったって……」
「俺たちの勝ち。もう凛に手は出さないって」
「……」


結果を聞いて、言葉を失う凛。

だけどだんだんと、肩が震えてくるのが伝わって、



「っ……ぁ……うわーーーっん!!」



この日、凛は初めて
子供のように声を出して泣きじゃくった。
 
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