ノラ猫
 
全身にはしる愛撫。
そのたびに、感じたことのない快感が襲う。


何度もこんな行為してきた。
だけどこんなに感じたことなんかなかった。


恥ずかしくて
いつの間にか震えていた肩はおさまっていて……


「凛……」


そっとかき上げられる前髪。
優しい眼差しと目が合う。


「智紀……。もう、いいよ」


それは一つになる合図。


完全に、恐怖が消えたわけじゃない。

過去の忌まわしい記憶が、消えるわけじゃない。


それでも今、
自分の瞳に映る愛しい人の姿が勇気を出させる。



「っ……」



あたしと智紀は
ようやく一つになることができた。
 
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