ノラ猫
 
「探すのに随分時間がかかっちまったじゃねぇかよ。
 親父はなんも協力してくんねぇし」


再び現れた義兄は、前に見たあの姿とは随分変わり果てていた。


伸びっぱなしの髪。
生えた髭。

そして何より、
目が普通じゃない。


「お前のせいで、俺の人生めちゃくちゃだよ。
 親父に勘当されて、家まで追い出された。会社を継がせる気もねぇってよ」


そうか……。
神楽坂は、実の息子との縁を切る方向をとったのか……。

最善策といえば最善だ。
こんな自分勝手な息子を次期社長になんかしたら、せっかくの会社も丸つぶれになる可能性もある。


「なあ、小耳にはさんだんだけど、結婚するんだって?凛と」

「……」


どこから情報を手に入れたのか、そんなことすら知っている。

何も答えず、義兄をじっと睨み続けた。


「まあまあ、そんな敵対視すんなよ。
 だって結婚するってことは、俺とお前は義理の兄弟になるんだろ?」


そう言って、義兄はハハッと笑い上げた。
 
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