ノラ猫
15章 一人ぼっち
 
(ごめん……。
 ……誰?)


一瞬、何を言っているのか理解出来なかった。


目の前にいる人は
ずっと目を覚ますのを待ち望んでいた最愛の人。

そしてあたしを愛してくれているはずの人……。


それなのに、その言葉はどういう意味……?



「は?何言ってんだよ、智紀」


意味が分かっていないのは雄介さんも同じだった。
目を大きく見開いて、智紀に詰め寄ってる。


「何怒ってんだよ……。
 あ、もしかして雄介の彼女?俺、紹介されてたっけ?」
「お前っ……!!」


まさかの返しに、雄介さんは思わず智紀の胸ぐらを掴んでいた。


「いって……お前、傷口開くだろうが……」
「……お前……嘘、だろ……?」
「嘘って何がだよ」


冗談を言っているようにも見えない智紀の態度に、雄介さんは腕の力をなくしてうなだれていた。


あたしも同じ。

腕の力どころか、全神経が活動をやめてしまったみたいだよ……。
 
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