ノラ猫
「凛ちゃんはお前の彼女だろ?!
来月結婚するんだろ!?」
「……は?」
目に涙を浮かべて問いただす雄介さんに、今度は智紀が目を丸くさせていた。
「俺の…彼女……?
結婚……?俺が?」
まるで他人事のように繰り返す智紀は、その目をあたしへと向けてきた。
じっと見つめるサファイア色の瞳。
だけど今までとは感情が違う。
「……知らない」
そして吐かれた言葉は
胸をえぐられるようなナイフ。
知らない。
嘘だ……。
そんなの……何かの間違い……。
「っ……」
「凛ちゃん!!」
堪えきれない現実に
思わず病室を飛び出した。