ノラ猫
「……」
どれくらい、泣き続けていたのか分からない。
気づけば空にかかる空は、真っ赤な空へと変わっていて、
綺麗な夕日が目の前を照らしていた。
大丈夫。
きっとすぐに智紀があたしを迎えに来てくれる。
「傷口開くんだから、勝手にどこか行くなよ」なんて笑いながら、「ごめん」って謝ってあたしを抱きしめてくれる。
だから大丈夫……。
「………凛ちゃん」
だけど聞こえてきたのは、あたしの期待する人の声ではなくて……
「大丈夫?」
「……雄介さん」
彼の友達の、雄介さんだった。
「今、先生と話してきた。
智紀、部分的な記憶喪失……だって」
「……記憶…喪失……」
「ほとんどのことは覚えてるんだけど、一部分だけが記憶から抜けちゃったみたいで……。
頭に衝撃を受けたわけではないから、おそらく1週間眠り続けて、脳が混乱を起こしているらしい」
説明をされても、うまく頭に入ってこない。
だって……
どうしてそれがあたしなの……?