ノラ猫
 
「はぁ……」


洗面台の前、花の手入れをして途方に暮れた。

予想以上の打撃。
気長に待って、笑っているくらいじゃないといけないのに……。


「……うん」


大丈夫。
だって相手は智紀なんだから……。


花瓶を手に持って、もう一度病室へと戻った。

だけど扉に手をかけたところで、二人の会話が先に耳に入ってきてしまう。


「もうちょっと、凛ちゃんに優しくできねぇの?
 せめて愛想よく笑うとかさー。
 可哀そうじゃん」


あたしのことを、必死に受け入れさせようとしてくれている雄介さん。

他人のことなのに、いつも一生懸命だ。


「そんな簡単にできるかよ。

 知らない奴になんて」


「……」


持っていた花瓶を、落としそうになった。
 
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