ノラ猫
「ごめん……。ちょっといい?」
「……」
だけど、あたしの手を引いたのは、期待していた人とは違った。
気まずそうな……
申し訳なさそうな顔をしている雄介さん。
「そこまで送ってくから」
「……はい」
断る言葉も見つからなくて、隣に並ぶ雄介さんをただ受け入れた。
「智紀もひどい男だよな。
あんな言い方しなくたっていいのに」
「……」
わざと明るく、茶化すように言ってくれる。
雄介さんが話すと、周りの空気が上がっていくみたい。
自分が思っている以上に、智紀に忘れられていることが辛くて……
弱音を吐き出すように、口を開いた。
「あたし……
自信ないです」
もう……
このまま逃げてしまいたい。