ノラ猫
 
「智紀……あたしのこと、知らない奴だって……。
 おか、しいですよねっ……。だってあたしたちは……」


(横川凛になれよ)


押し付けるような、プロポーズ。

それでも、あの時の感動は今でも忘れられなくて……


(なり…たいっ……。
 横川凛に……なりたいっ……)

(じゃあ、なれよ。
 一緒に生きていこう)


確かに、そう約束したはずなのに……。



「あたし……また、一人ぼっちになっちゃった……」



一緒に生きていこうと約束した人に
自分の存在を忘れられてしまった。


もうあたしは、世界で一人きり……。



「じゃあ、俺のとこに来る?」



予想だにしていなかった一言。

驚いて顔を上げると、複雑そうに笑う雄介さんがいた。
 
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