ノラ猫
 
「悪かったな……。
 お前のことばっか責めて……」


俺の思いを知って、雄介は悲しそうに謝った。


他人のことでも、必死になって、自分のことのように思い悩む男。
それが雄介……。
ほら、ちゃんと分かる。

それなのに……。


「今日はもう休めよ。
 医者も、無理やり記憶を引きずりだそうとするのはよくないって言ってんだろ」

「……ああ」


俺の記憶は、一時的なものと言われている。

そのうち思い出す可能性のほうが高いと……。



だけどそんないつになることか分からないことを待ってられない。

早く……

この穴が開いたような記憶を……。

 
< 196 / 258 >

この作品をシェア

pagetop