ノラ猫
「………ん…」
朝の気配を感じて、ふと目を覚ました。
だけどベッドはもぬけの殻。
シャワーを浴びる音も聞こえず、この部屋にいるのは自分だけだと悟る。
ヤリ逃げ。
世間ではそう言うのかもしれない。
だけどそれで十分。
むしろあたしにとっても好都合だ。
必要以上に、自分に詮索を入れてほしくないから。
あたしが男に求めるのは、朝を迎えるこのホテル代を出してくれること。
だから絶対に、前払い制のホテルを選ばせる。
「ふぅ……」
シャワーを浴びて、バスタオルのまま部屋へと戻った。
今日は何曜日だろうか……。
たしか……月曜日。
じゃあ、きっと、今日の夜は男をひっかけるのは難しいだろうな……。
そんなことを考えながら、
ホテルに備え付けてあるアメニティを手にして、自分も部屋を出た。