ノラ猫
「智紀さんは、ここ、長いんですか?」
「一週間くらい前から。大けがして入院してるだけ」
「そうですか……」
「君は?ずっと?」
さっき、入退院繰り返してるって言ってたってことは、入院の常連なんだろう。
「はい……。
ずっとというよりは、退院しては倒れて入院して……。
そんな感じです」
そう言って微笑んだ彼女は、儚く、胸がきゅっと痛くなった。
だけどなんだろう……。
確かに彼女の微笑みは切ない。
同情をおぼえる。
けど……
さっき、凛が病室から出るときに見せた、無理やりな笑顔のほうがずっと胸が痛かった……。
「あの……」
彼女が、遠慮がちに口を開く。
「もしよかったら……
智紀さんが退院するまで、話し相手とかになってもらっていいですか……?
「え?べつにそれくらいなら……」
「ほんと!?よかったぁ!」
彼女はまた、華のような笑顔で微笑んだ。
俺のモヤモヤした心に
少しだけ光が射した気がした。