ノラ猫
「智紀はもう……別の道を歩き出しました……」
「は?」
「あたし……捨てられちゃったんだ……」
ずっとともに生きていくと誓った。
だけどそれは、あくまでも昔の智紀と……。
今の智紀とではない。
「も……一人ぼっちだっ……」
おさまったはずの涙は、再びこみ上げてくる。
一人だと感じた瞬間、襲ってくるのは恐怖。
今まであたしは、どうやって生きてきたの?
「凛ちゃん……」
「雄介さん……。
あたしを拾ってくれますか……?」
頭に浮かんだのは、どうしようもない最低な道。
一人で生きることが怖くて
誰かにすがらないと生きていけない。
お願いだから……
もう一人ぼっちは嫌なの。
雄介さんの手を取り、そっと自分の胸へとあてた。
「りっ……」
「あたしのこと……好きにしていいですから」
たとえこの体を差し出しても
こんな自分に温かい温もりを与えてくれるのなら……。