ノラ猫
 
「なん…で、ですか……。だって……」

「凛ちゃん。そんな自分を安売りしないで」


返ってきた言葉は、思いがけない言葉。

今の自分にできること。
雄介さんのように、心がまだ彼を好きだと思っていないのなら、先に体を授けるしかできないと思ってた。

だから覚悟して、
彼を求める分、自分の体を差し出したのに……。


「俺が好きになった凛ちゃんは、そんな凛ちゃんじゃないから」


スパッと言われた言葉に、何も言い返せなかった。


「いつも智紀を想って、苦しくても辛くても一途に想ってて……。
 そりゃ、助けを求められたら受け入れるって言ったけど……。そうじゃない…そうじゃないんだ」


ゆっくりと首を振って、懇願の眼差しを向けてくる。
雄介さんの言っている意味が、よく理解出来ない。

あたしはもう、智紀を好きでいるのが疲れたんだよ……。


「もちろん、これからは凛ちゃんの支えになる。
 智紀を諦めるって言うんなら、俺を逃げ道にしていい。
 けど……抱くとか、体を好きにしていいとか、そういう言い方はやめて。

 凛ちゃんは綺麗なんだから」


「……」


胸にナイフが刺さったかと思った。



綺麗……。

そんなの……
そんなわけない。
 
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