ノラ猫
「凛ちゃん、もしかしたらもう二度と会えないかもしれねぇぞ」
「どういうことだ?」
さっきも、凛がいなくなったかもしれないと聞いた。
でもいくらなんでも、凛の実家や他の知り合いをたどれば分かるだろ?
「昔に戻っちまったんだよ。……多分」
「昔?」
その言葉の意味が分からなくて、首をかしげた。
「凛ちゃんはお前と出逢った頃、一切感情を出さない子だったんだよ。
笑うことも泣くこともせず、どんなに辛い思いをしても人形のように冷たい瞳を向けたままで……」
「なんだよ…それ……」
そんなこと、初めて聞いた。
だって俺の知っている凛は、
愛想笑いも出来るほど、ちゃんと感情を持っている。
寂しさも見せるし、涙だってある。
人形のような冷たい瞳って、どういうことだ?
「俺だってそんなときの凛ちゃんは知らない。
とあることのせいで、俺は事情を智紀と凛ちゃんから聞いただけだから。
けど……
人形のように何も感情のない凛ちゃんに、
泣くことも笑うことも……人を好きになる感情も教えたのは………お前だ」
「っ……」
その瞬間、胸がえぐられるように悲しくなった。