ノラ猫
「俺じゃダメなんだ。
俺じゃ、凛ちゃんをもとに戻してやれない。
それどころか、あんな瞳に……」
雄介は悔しそうに唇を噛んだ。
この前、凛を好きだと言っていた雄介。
本当なら、雄介自身が凛を救いたいんだろう……。
それでも今、こうやって俺に言ってくるその意味は……
「あとはお前次第だからな」
それだけ伝えて、雄介はうなだれたまま俺の前から去って行った。
一人残された自分。
こんなにも胸が痛むのに
記憶はいまだに戻らない。
凛がいなくなった。
だけどどこに?
分からない。
今の俺には分からないんだ……。
だって凛が好きになった俺は
過去の俺だろ?
今の俺じゃ、きっと凛は救えない。