ノラ猫
 
「俺じゃダメなんだ。
 俺じゃ、凛ちゃんをもとに戻してやれない。

 それどころか、あんな瞳に……」


雄介は悔しそうに唇を噛んだ。

この前、凛を好きだと言っていた雄介。
本当なら、雄介自身が凛を救いたいんだろう……。

それでも今、こうやって俺に言ってくるその意味は……



「あとはお前次第だからな」



それだけ伝えて、雄介はうなだれたまま俺の前から去って行った。



一人残された自分。

こんなにも胸が痛むのに
記憶はいまだに戻らない。


凛がいなくなった。
だけどどこに?


分からない。
今の俺には分からないんだ……。



だって凛が好きになった俺は
過去の俺だろ?


今の俺じゃ、きっと凛は救えない。
 



< 218 / 258 >

この作品をシェア

pagetop