ノラ猫
キッチンには、赤と黒のお揃いのマグカップ。
箸やお皿は、身に覚えのないもの。
ソファーの上に置かれた、自分では使わない小さなクッション。
洗面所に行けば歯ブラシは二つあって、
寝室に行けば枕が二つ並べてある。
それは全部、
凛とともに過ごした証……。
本当に、俺は凛と付き合ってたんだな……。
分かってはいたけど
いざ目の前にした衝撃。
胸だけはドクドクといっていて
凛という存在が確かに自分の中にいたと実感させられる。
リビングへ戻って、部屋全体を見渡した。
「……」
そして、棚の上にある、一つの写真立てに目がいった。
ゆっくりと歩を進め、その写真立てを手に取った。
そこには、二人仲良く寄り添った写真が飾られていて……
「……っ…」
なぜだか分からないけど
俺の瞼から一筋の涙が流れ落ちた。