ノラ猫
「凛ちゃん、誰コイツ?」
その隣に、全く知らない男が一人。
凛の肩に手をまわして、俺のことを不思議そうに見てくる。
凛の新しくできた彼氏……?
いや、見る限り、そんな雰囲気じゃない。
もっと別の……。
凛は男の言葉に、もう一度俺へと視線を送ると、
「知らない」
一言、そう言い放った。
知らない。
言われて、初めてその言葉の冷たさを知る。
知っているはずなのに、冷たく突き放されて……
俺は今まで、そんな言葉のナイフを、凛にぶつけ続けてきたのか?
「凛……」
再度名前を呼んでも
凛の表情は変わらない。
冷たく、他人を見る瞳。
なあ、俺の声はもう届かないの……?
その瞳に俺が映ることはないの……?